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明星学苑報WEB版

理事長座談会

東京都青梅市に拠点を置く明星大学造形芸術学部では、そのクリエイティブな学びと地域社会への貢献とを結びつけた「産学公連携プロジェクト」を積極的に展開しています。地域の自然、街、産業、文化などとの交流を深めながら学ぶ姿は、まさに明星学苑の教育方針に掲げられる「体験教育」そのもの。
今回は、産学公連携プロジェクトが生み出した成果の数々について、プロジェクトに関わった教員と学生に話を聞きました。


青梅にある国際的に有名なメーカーとも連携
蔵多 明星大学の造形芸術学部では「体験実習」として、学生たちが青梅市とコラボレーションした芸術作品を数々制作し、町の活性化に一役買っていると聞いています。地元企業とも連携した「産学公連携プロジェクト」も推進中とのことですが、まずはそれらの取り組みの概要を教えていただけますか。
浅井 プロジェクトのスタートは4年前、当時は「体験演習」と呼んでいた授業に遡ります。学生たちをキャンパスの外に出して、何か創作につながる“ネタ”を集めさせるような活動をしたいとの思いが教員側にあり、せっかく青梅にキャンパスがあるのですから、青梅市について何か調べてみようとなったわけです。あくまで最初は、青梅の町、自然、企業などに学生が触れるなかから、何かネタを探し出してくれればいいなと考えていた程度でした。
蔵多 それがいつの間にか数々のマスコミにも取り上げられるプロジェクトに発展したわけですね。
浅井 はい。青梅について調べるうちに、「どうせなら新しい青梅の名物をつくろう」と話が膨らみ、学生たちをいくつかのグループに分けて、それぞれにアイデアを出させました。ただ授業内でアイデアを考えるだけだと面白味も真剣味もないので、「青梅市の商工会議所や商店街の方々を招いて、実際にプレゼンテーションをやるぞ」と企画したのです。
冨田 結果的にはそのプレゼンテーションが大成功でした。7件の提案をした商品やアイデアのうち5件について実用化できないかと興味を示してくださる地元の企業があったのです。これがきっかけで毎年、青梅市内の関係者を前に学生たちのアイデアをプレゼンテーションすることが定例化しました。今年から「体験実習」と名前を変えましたが、いまも5年目となるプレゼンテーションに向けて学生たちがアイデアを出し合っているところです。ちなみに今日座談会に来てくれた3人は、4年目だった昨年の取り組みに参加したメンバーです。もっとも作品に関わったきっかけは三者三様で、それぞれに面白い経緯があります。
蔵多 私も毎年、そのプレゼンテーションは拝見しています。今年はどんなアイデアが飛び出すのだろうと毎回とても楽しみにしており、3人が手にしている作品にも見覚えのあるものがありますよ。では、学生たちがプロジェクトに関わった経緯を教えてもらいましょう。
冨田 まず加藤さんのハンカチ『青梅花紀行』ですが、本学のすぐ近くに国際的にも有名なタオルメーカー『HOTMAN』があり、そちらから「地域ブランドとなる商品のデザイン」と「青梅マラソンで使用するタオルのデザイン」の2件の依頼が届きました。そこで学生たちを対象に作品を公募し、地域ブランドの商品について最終的に残ったのが加藤さんの作品だったのです。
蔵多 自分が考案し、描いた絵が商品として販売されるのはすごいことだと思います。商品を目にしたときはどんな気持ちでしたか。
加藤 もちろんうれしいです。と同時に「私の絵でいいのかな」という思いもありました。でも、大きな自信になったことは確かです。
蔵多 そうでしょうね。ところで実は私も先日、このハンカチを購入させてもらったんです。
加藤 えっ、本当ですか。
蔵多 本学苑を訪れたお客様へのちょっとしたお土産にちょうど良いと考えました。しかも「うちの学生の作品です」と、自慢しながら手渡せますから効果は絶大です。確か絵柄が6種類あるんですよね。
加藤 はい。青梅の観光地で見られる6種類の花を描きました。吹上しょうぶ園の「花菖蒲」、吉野梅郷の「梅」、御岳山の「レンゲショウマ」、梅岩寺・金剛寺の「枝垂れ桜」、塩船観音寺の「つつじ」、釜の淵公園の「山吹」です。
蔵多 このアイデアはすぐに思いついて、スラスラ描けたのですか。
加藤 もともと花や自然が好きで、提案する作品にも取り入れたいと考えていました。ただ、アイデアが認められてから商品化されるまで約1年かかり、その間に何度も書き直しました。特に青梅の象徴でもある梅は、5回程修正を加えましたね。
浅井 学内で終結する通常の授業とは異なり、企業と連携して製品化するのは“ビジネス”ですから、当然プロとしての高いレベルが求められます。学生はもちろん、我々教員にとってもかなり大きなプレッシャーです。しかし、本当に貴重な体験ができたと実感しています。なお、青梅マラソンのタオルに採用されたのも本学を今春卒業した学生の作品でしたが、こちらもマラソン当日に用意した枚数が完売するほど大好評でした。


どんな優れたアイデアも認めてもらうことが大切
浅井 小川さんの作品は、ホームセンターを運営する『ヤサカ』という地元企業とのコラボレーションです。最近人気の高い「ガーデニング関連商品」というテーマが設けられ、これも作品を学内で公募しました。学生たちがアイデアを立体の形にし、それらの作品は実際にヤサカの店頭に並べられ、一般のお客様からの人気投票を受け付けたのです。そのなかでトップになったのが小川さんのフラワーポット『Popet』でした。
小川 ペットのように可愛いポットという意味で『Popet』と名付けました。ちょうど底の部分が歩いている足のようになっているところがデザインのポイントです。
蔵多 ああ、なるほど。これは可愛いですね。
小川 より多くの方に植物に対して関心や愛着を抱いてもらいたいと考えていく過程で、ポットを人間らしく見せよう、それには足をつけてみようとアイデアが浮かびました。これは楽しそうだと自分でも手応えがあったので、アイデアをスケッチするときは、手が勝手に動いた感じでした。
蔵多 いまも『ヤサカ』で購入できるのですよね。コンセプトもしっかりしているし、これは売れているでしょ。
浅井 それが難しい問題も抱えていまして…。地産地消の方針もあって、多摩の間伐材を使用し、加工もその多くが手作りで行われるのですが、こうしたポットは、中国やインドネシアなどのアジア地域で作られたものが多数出回っており、それらは大体300円から500円程度で手に入るのです。一方で小川さんの『Popet』は、1800円で売られています。そこまでの付加価値を認めてもらうのは、なかなか難しいようです。
小川 確かに企業の方とお話すると、ほとんどがコスト面の話になります。大学の授業で作品を作るときにコストのことを考える機会はあまりないので、そういう意味では社会の仕組みというのか、ビジネスの世界を体験できたとの思いが強いです。
蔵多 それはそれで貴重な体験ですね。さて、そして3つ目の作品が『小梅っ子ちゃん』。これも可愛いですね。
冨田 『小梅っ子ちゃん』は、2つの要素が絡み合って生まれた作品です。まずは、以前体験演習の一環で青梅駅周辺の店舗と連携した映画のレトロ看板を本学の学生が描きました。既に100作品を超えているのですが、これらを見て回るためのマップを観光客に配りたいとの依頼が青梅市から届いたのです。そして、ちょうどその頃、梅津くんが「青梅市の“ゆるキャラ”を作りたい」と考えており、レトロ看板のマップにオリジナルキャラクター『小梅っ子ちゃん』の掲載を提案したところ採用されました。ただし、梅津くんはそれで満足しているわけでなく、自力で『小梅っ子ちゃん』のさらなるアピールをいまも続けています。
梅津 最終的には青梅市の公式キャラクターに認定してもらうことが目標です。そのためにも少しでも多くの人に『小梅っ子ちゃん』を知ってもらおうと、昨夏には青梅駅前のギャラリーでオリジナル商品を用意して個展を開きました。カレンダーやエコバッグなどを見た地元の人にも「いつ商品化されるの?」「これは公式キャラだよね」といった感想をいただき、うれしさとともに自信も持ちました。実際に市役所の方も来場してくれ、完成度の高さは認めていただけましたが、やはりコスト面や販売ルート等を考慮すると、公式キャラクターへの道は険しそうです。
蔵多 それにしても『小梅っ子ちゃん』には強い思い入れがあるようですね。
梅津 実は4年程前に、夢だった絵本を出版された先輩がいて、「あきらめずに頑張れば絶対に形になる」との言葉にすごく刺激を受けたんです。僕自身も後輩たちのために何か残したいと思っていて、それがこのキャラクターだと考えています。卒業までの期間、あきらめずにアピール活動は続けていくつもりです。


社会で生きる力を身につける体験と実践
蔵多 これらのプロジェクトは、もっと以前からの取り組みかと思いましたが、まだ5年目なんですね。歴史は短くても今回の3人の作品以外にも、これまでに秀逸なアイデア商品がたくさん誕生しています。以前『ヤサカ』と連携して販売した多機能に使えるイスは、日野校の理事長室にもちゃんと置いていますよ。でも一番インパクトがあったのは、やっぱり『オウメンジャー』でしょうか。
浅井 そうなんです。『オウメンジャー』は、いま地元で大ブレイクしているんですよ。市内のお祭りに呼ばれたり、子どもたちが集まるイベントに参加したりなど大人気です。最近、妹分の『コウメンジャー』も誕生したんですよ。
冨田 『オウメンジャー』は、とうとう本学部のオリジナルサイトにもさりげなく登場しています。ぜひ探してみてください。
蔵多 『オウメンジャー』のプレゼンテーションはインパクトがあったので、鮮明に覚えていますよ。説明の途中で突然、舞台裏から本物が登場したんです(笑)。それにしても毎年、学生たちのプレゼンテーションを見ていて感じるのですが、年々プレゼンの質が向上していますね。もちろん先生方の指導の賜物でしょうが、学生たちが堂々としてきたように感じます。どちらかといえば、芸術家志望の学生たちですから自分を作品でしか表現できないタイプが多いと思うのですが。
冨田 実際に人前で話すのは苦手な学生が多いですよ。でも、この体験実習を経験する過程でガラッと変わりますね。みんな見違えるように変身します。
浅井 企画を進める段階でグループ内で話し合いますが、もちろん意見の食い違い等で討論や激論もあるわけです。それでもそれらの意見をまとめ、最終的に形にし、プレゼンテーションまで行うのですから、社会に出てからも本当に活かせる力が身につくと思います。
蔵多 なるほど。その通りですね。実際に貴重な体験をした学生たちの意見も聞かせてもらいましょう。
加藤 ひとつの商品を完成させるまでに、本当に多くの人の力が必要であることを知り、勉強になりました。大学の授業で課題を作るのは自分だけの世界で済みます。でも仕事として作品を仕上げるには人とのつながりが大切になってくることを学びました。
小川 私も社会と関わることの大切さを強く感じました。それと自分では自信を持って日々の課題づくりに臨んでいるつもりですが、これで大丈夫かなとの不安も正直あります。そんななかで自分の作品が第三者の方に評価されたことで、本当に自信を持つことができました。
梅津 これまでは自分で納得いくものが作れれば満足していました。でも自分のためでなく、例えば青梅市のために何かを考案するときは、市民の目線というのか、客観的な視点が必要だと気づきました。自己満足で終わらせずに「他人が見るとどう感じるだろう?」と考える癖がつき、これはきっと今後の仕事にも役立つと思っています。


優れた才能を大きく開花させるために
蔵多 では、最後にこれからのみなさんの目標を聞かせてください。
加藤 より深く日本画について学びたいと考えています。そのために他大学になりますが、大学院への進学も視野に入れて勉強しているところです。ただ『青梅花紀行』を通じて得られたさまざまな経験は、これから私なりの日本画を描くことにも活かせると思います。
小川 まさに就職活動の真っ最中です。大学で4年間学んできたプロダクトデザインの知識と技術を活かした仕事ができれば最高だと考えています。大学の授業は本当に大変だったので(笑)、それを考えれば、これからの苦労は何でも乗り越えられそうです。それに『Popet』が商品化されたのは、自分にとって本当に大きな出来事でした。この感動を今度は仕事で味わえるように頑張ります。
梅津 大学4年の卒業制作で『小梅っ子ちゃん』を考案し、研究生としての1年は積極的にアピール活動を展開してきました。その努力が認められたのか、無事に“ご当地グッズ”の土産物を作っている企業への就職が決まりました。社会人になっても『小梅っ子ちゃん』から学べたことを存分に活かすつもりです。
冨田 作品が多くの人に認められた3人にしても、決してその過程は順調なことばかりでなく、むしろ挫折や失敗を繰り返した結果、いまの作品が完成しました。こうした経験はきっと社会に出てから活きてくるはずですし、これからのみんなのさらなる成長に期待したいです。
浅井 青梅市の役所の方や商工会議所の方などを前にした“大舞台”を経験した彼らですから、きっとこの経験を活かして、この後のステージでも活躍してくれるはずです。
蔵多 私は以前、NHKで人事を担当していた時期があり、多くの学生たちの面接等を行いました。そのなかで、ふと目を引く人というのがいるものです。一言でいえば、自分自身を持っている人。「この会社でこのことをやりたい」と、はっきりした指針を持っている人とも言い換えられます。今日お話させていただいた3人をはじめ、造形芸術学部には、他人にない優れた才能を持った学生がたくさんいます。そして業界の第一線で活躍中の素晴らしい先生方との出会いのなかで、大きな才能をさらに開花させてほしいと思います。
 今後は法人本部でも明星の卒業生の強固なネットワークを組織的に運営していくことを計画中です。そんな人と人とのつながりのなかで、造形芸術学部の学生たちの作品が求められる場面も生まれてくるかもしれません。これからも明星学苑の教育方針である「体験教育」に基づく取り組みに対し、大いに注目しておりますので、さらに充実した実践プログラムを展開していただきたいと思います。本日はありがとうございました。