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明星学苑報WEB版

理事長座談会 大学の生き残りをかけた教育改革の推進

少子化や不況の影響で大学経営にも危機感が漂う時代。
いまこそ世の中のニーズに順応した「教育改革」が求められています。
この4月、ともに改組改編を実施し、あらたな改革への一歩を踏み出した 明星大学の小川学長といわき明星大学の関口学長にご登場いただき、 大学が取り組むべき改革の方向性について、蔵多理事長と具体的な意見の交換をしました。


■教育の質保証のために、 大学が取り組むべきこと
蔵多 ここ数年、国の方で大学教育に関するいろいろな動きが見られます。平成20年には、文部科学省の中央教育審議会が「教育振興基本計画」を策定。我が国の教育をめぐる現状と課題が発表され、今後5年間を目処に、高等教育機関である大学が重点的に取り組むべき事項として、「教育力の強化と質保証」「卓越した教育研究拠点の形成」「国際化の推進」などが挙げられました。とくに「教育の質保証」との観点では、日本私立大学団体連合会(日本私立大学協会、日本私立大学連盟、日本私立大学振興協会)が、それぞれの加盟大学にアンケートを実施してその現状を探るなど、日本全体で“大学の在り方”が検討される時代になったといえます。こうした時代背景において、明星大学、いわき明星大学は、現在どのような状況にあり、これからどのような改革を進めていくのか、両学長にお話をお聞きしたいと思います。
小川 理事長からご指摘のあった通り、中央教育審議会の流れを視野に入れた取り組みを明星大学でも行っています。とくに一番重要なのが「学士課程の教育向上」だと思いますが、何年か前までは、大卒の社会人は出身大学によって、ある程度の学力が測れた時代がありました。いわば大学の“質保証”です。しかし、少子化の影響や入試制度の多様化などにより、同じ大学の卒業生であっても学力に大きな差が出るようになりました。これでは大学の質保証にはならないわけです。このような時代だからこそ、大学には教育の質を保証する義務があるといえます。
蔵多 教育の質保証のため、明星大学では、どのような取り組みを展開していく予定ですか。
小川 一昨年の明星学苑創立85周年を機に、学苑全体でめざすもの、および各校ごとの教育目標や取組課題などが検討され、本学では大学の特色をさらに明確に打ち出すため、“学部・学科の大規模な改組改編を行うこと”“教育課程の全面的改訂を行うこと”など、5つの課題を掲げました。もちろん、これらの課題をクリアにしていくことが、喫緊に取り組むべき内容であると認識しています。まずは第一段階として、この4月から既存の6学部のうち3学部において大きな改組改編を行いました。今回の改革は、本学の教育の特色をより明確で鮮明にするための準備作業だと位置づけています。引き続き、第二段階となる教育課程の改革、授業方法の改善に着手し、第三段階として改革が順調に進んでいるのかを自らチェックできる体制、つまりは自己点検・自己評価を実施できるシステムの構築をめざすつもりです。これらは、学苑や大学の明確な目標を実現するべく、昨年起ち上げられた「MI21(Meisei Innovation for 21st Century)」とも関連した取り組みだと思っています。
関口 いわき明星大学は、現在かなり厳しい状況です。少子化問題や若い世代の都会志向など、いくつか要因はありますが、すべてそれらのせいにしていては前に進めません。とにかく学生の目線に立った教育を実施し、高校教員や保護者の方々に対して、“しっかりと子どもを育ててくれる大学”という信頼感を勝ち取ることが重要です。そこで昨年4月の学長就任を機に、私は「教育改革」を大きな施策のひとつに掲げました。翌5月には「教育改革推進準備室」を起ち上げ、「教育改革3カ年計画」を作成。12月に計画案がまとまり、年が明けて1月には準備室を発展させた組織「教育改革会議」を設置しました。間もなく全学的な取り組みがスタートする予定です。
蔵多 現段階で想定されている具体的な取り組みには、どのようなものがありますか。
関口 入学してきた学生を卒業時にどのような付加価値をつけて送り出すのか、それを学部学科ごとで明確な目標に形づけることから進めています。その目標に関しては間もなく素案が上がってくる段階です。また、より具体的な部分で言えば、語学を含めた一般教養科目の再構築を考えています。本学は小さな大学ながら、全部で130前後の科目が設置されており、履修状況を考慮した場合、約半数ぐらいまでは絞り込むことができると判断しました。減らした分は、新たにコミュニケーション系科目や情報処理系科目など、実践的な学びを充実させるつもりです。
蔵多 以前は、大学が存在していれば学生が集まってくれた時代もありました。しかし、これからは学生に選ばれる大学でなければなりません。そのためには“選ぶ側”の視点に立つことが必要。学生や社会が、いま何を求めているのかを真剣に考えることが大切ですね。

座談会

■充実した教育環境の整備には、優れた教員の育成が必要
蔵多得三郎
蔵多 さまざまな教育改革をめざす両大学ですが、とくに力を注ぎたいポイントとなる部分はどこですか。
小川 やはり初年次教育でしょうか。先程も入試制度の多様化について話しましたが、最近の学生は、入学時の学力の差がかなり大きいのが現状。初めから授業についていけない学生もいます。また、なかには第一志望でなく入学してきた学生もいるでしょう。そういったモチベーションの低い学生をそのままにしておくと、4年間耐えることができず、大学を辞めることを考えるかもしれません。入学して間もない時期に、学生にどのような教育を施せるのかは、大学の大きな課題だと思っています。
蔵多 そうですね。大学に入ってきた学生が、4年間の大学生活をまっとうできる体制を作ることは、大学最大の使命かもしれません。初年次教育といえば、いわき明星大学には、1年生を対象にした「フレッシャーズ・セミナー」という科目がありますね。
関口
 「フレッシャーズ・セミナー」は、薬学部の1年生向けの施策です。薬剤師になるために学ぶべきこと、やるべきことを最初の段階で明確にすることで、自身の目標・目的を見失うことなく、意欲を持って6年間の長丁場を過ごしてもらうために設けています。
蔵多 薬学部だけの取り組みなのですね。
関口 まず薬学部のみで始めたのですが、顕著な効果を得られることが見えてきたため、学科の改編を行った科学技術学部でも今年度からスタートすることになりました。なお、人文学部に関しては、それぞれの学科ごとに新入生のための科目を用意しているので、「フレッシャーズ・セミナー」としては実施していません。
小川 明星大学では新入生向けの科目として「自立と体験1」という必修科目を設けています。大学の学習環境にスムーズに対応してもらうことと、明星の教育理念を理解してもらうことが主な目的ですが、この科目の最大の特色は、学部学科関係なく横断型でクラスを編成することです。多彩な学部学科が集う明星大学であれば、学生たちは他学部の仲間からさまざまな刺激を受けることができるはずだと考えています。また、もうひとつ面白いのは、この科目を担当する教員も、自分の学部学科に関係なく学生を指導してもらうことです。例えば理工学部の教員であっても、人文や造形芸術など他学部の学生に対して教育する責任が生じます。このことで“明星教育”は大学全体で推進していくのだとの“使命感”を共有してもらうことが狙いです。
蔵多 学生にとっては理想的な学びの現場ですが、教員から見れば大変な取り組みです。反対意見はありませんでしたか。
小川哲夫
小川 この科目そのものの設置に対しては、反対意見はありませんでした。教育内容や方法には色々な意見はありましたが、幸いにも最後には、大多数の先生方は賛成してくれました。基本的に大学の教員は、自身の研究分野があり、その実績を基に教員として採用されます。その高度な専門性を教えることこそが“職務”なわけです。中学校や高校の教員も科目ごとのエキスパートではありますが、彼らはクラス担任を受け持ったり、生活指導を行ったりなど、学校でさまざまな役割が課せられます。「自立と体験1」では、ある意味、中学校や高校の教員のように、専門分野以外の教育指導を大学教員にも求めるのですから、難しい仕事なのは承知しています。ただ慣れない指導であっても、実際にやってみれば、教育課程の全体を理解できたり、学生たちの生活環境が見えてきたりなど、教員にとっても大きなメリットがあるはずなのです。私は教員へのFD(Faculty Development)※活動の一環であると認識しています。
蔵多 なるほど。教員に対する教育にもつながっているわけですね。教員の意識改革は、大学教育の質向上とも連動します。いわき明星大学ではいかがですか。
関口 本学でもFD活動に関して、昨年は大きな改革を行いました。それが全教員の参加を義務づけた「FD研修会」の開催です。まずは、テレビ等のコメンテーターとして著名な桜美林大学大学院の諸星裕教授を講師に招き、「我が国の大学の致命的欠陥」と題した基調講演をお願いしました。講演の後は、いくつかのグループに分かれた教員たちが、本学のニーズ確認と対策、適切なシラバスの作成などについて討論。実践的なトレーニングを積んでもらいました。朝から夜までびっしりのプログラムでしたが、参加した多くの教員から、「他学部の先生方ともコミュニケーションが取れて良かったです」など、好評の声が上がり、まずまずの効果があったと思います。当日出張などで参加できなかった教員には、後日追加研修を行い、予定通り全教員の参加を実現しました。
蔵多 その後、何か研修会の成果は出ていますか。
関口 従来シラバスの内容は、個々の教員に任せきりでしたが、今年度からは新しく作成したマニュアルに沿ってまとめてもらうようにしました。シラバスは“学生との契約書”とも呼べるもの。学生にとって、もっとわかりやすい内容にしてほしいとの要望は以前からあり、それを実現した形です。教員には極力、学生が主語になるような文章で書くことを求め、各学科主任に内容をチェックしてもらう体制も整えました。学生が各授業の詳細を理解できる“わかりやすいシラバス”が完成したと思っています。

座談会

■地域に根づき、地域に受け入れられる大学づくりをめざして
蔵多 明星学苑では平成35年に迎える創立100周年に向けて、「Action100」と題した長期ヴィジョンへの取り組みをスタートしました。これからの10数年は、大学をはじめとする教育機関にとって、まさに“生き残り”をかけた重大な時期となります。そんな厳しい時代に大学が生き残るためには、その大学独自の特色が必要です。いわき明星ならではの取り組みといえば、文科省の現代GPにも採択された「環境エネルギー教育リーダー」養成プロジェクトが挙げられますね。
関口武司
関口 最近は、地域の小、中学校へ出向いて環境についての授業を行う「出前講座」の需要がかなり増えてきました。基本的には本学の教員が授業を行いますが、現場に学生も同行して、教員を手伝ったり、ときには授業も担当したりなど、学生にとって貴重な体験の場にもなっています。地元地域との連携も深まるなど、3年間の取り組みが実を結ぼうとしているところです。
蔵多 いわきという地域性を考えれば、地元との緊密な交流、連動は、大学が生き残るために欠かせない道といえますね。
小川 大学経営は、確かに厳しい時代です。こういう苦しいときこそ、もう一度、創設者が大学を設立した当時の思いを考えてみるべきではないでしょうか。児玉九十先生が考えたこと、それは明星大学を多摩地区に根ざした大学にすることだったと思うのです。多摩に位置する本学は、もしかすると都会型の「都市銀行」にはなれないかもしれません。ただし、不況にも左右されない堅実な「地方銀行」にはなれるはずです。たとえ地銀であっても足場をしっかりと固め、志を高く持てば、世界に羽ばたける可能性もあります。地元から“しっかりとした人材を育てる大学”との評価をもらえるような改革を進めていくつもりですし、それが本学の基本スタンスであり、生き残るためにも必要なのです。
蔵多 確かにいわきだけでなく、明星大学についても地域性は大切ですね。「Action100」の一環で、“明星ネットワーク”という取り組みを始める予定ですが、これは「明星」に関係する人々を結びつけて、明星ならではの確固たるネットワーク基盤を作ろうとの試みです。例えば多摩地域には、明星大学の卒業生が約7〜8万人います。そのうち2割が多摩を離れたとしても5万人前後の卒業生がいまも住んでいる計算です。仮にその5万人が1家族4人とすると20万人の“明星ネットワーク”が築けます。これこそ多摩地域に最初にできた大学として、50年近くの歴史を積み重ねてきた大きな“アドバンテージ”です。こうしたネットワークを具現化した先には、新入生確保につながったり、さらに強固な同窓会組織を形成できたり、また会社を経営する卒業生のもとには、貴重な就職先として学生を送り込めるかもしれません。この春から早速、取り組みの第一歩をスタートさせる予定です。
関口 いわき明星大学でも、これから本格的に教育改革を進めていくにあたり、最終的な目標として“卒業生に感謝される大学”をめざしたいと考えています。楽しいだけではなく、ときには厳しさも経験し、充実した学生生活を過ごした学生が、社会人になったときに「いわき明星で良かった」と思ってもらえるような教育環境を整えたいのです。学生が大学の良さに気づくのは卒業後かもしれません。でも、卒業後に母校に愛着を感じてもらえることこそ、大学の本質的な役割ではないでしょうか。
蔵多 これは個人的な考えですが、大学は地域に貢献する人材を育てると同時に、自らの大学を支える人材育成も必要だと思うのです。明星の大学を卒業し、明星の大学院を修了した、いわば“明星教育をまっとうした教員”が、もっと増えることを期待しているのですが……。私は、大学は知的水準の高い人材が集まった集団だと考えています。何しろさまざまな研究分野でトップクラスの実績を残した教員が揃っているのですから、民間の企業では考えられない“財産”です。こうした素晴らしい財産をどう生かすべきなのか、ひいては明星学苑はどの方向に進むことでコンセンサスをとっていくべきなのか、これから小川、関口両学長にもお力を借りながら、改革に取り組んでいきたいと思います。ぜひ、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。